梅切らぬバカ

自閉症中年息子と老母の暮らしぶり。

自分の死後、一人残す息子のことを考えてグループホームで自活を試みるが

自分の生活のリズムを徹底する彼にとって、集団生活は合わない。そして母も老いた身に寂しさが沁みる。物語は老母と中年息子(中心)、自閉症の人と地域社会(遠巻き)、そのお隣さん(隣接)と3つの軸が交差する。父が残した梅の枝を切るに切れない心情と「梅切らぬバカ」の諺の意味と相反するのも可笑しい。

乗馬クラブを経営する高島がグループホーム反対運動集会で移転を求めていたが

ひょっとすると自分も排斥の対象となる危うさを孕んでいるから強く言えない、という見せ方も良かった。忠男が結果的に馬を逃がしたことも、これまでの鬱積したものが一気に吐き出せた感も良かった。

揉めていたお隣さん一家とも、忠男の出戻りお祝い会に参加し一応の和解を見たが生活が急変することなくたんたんと続くのもよい。

脇を固める、渡辺いっけい林家正蔵徳井優、北山雅康と山田組の実力者たちが

笑いと切なさを好演している。