PLAN75

75歳以上は安楽死を国から勧められる「PLAN35」という制度のある世界を描く。架空の話だが、コロナ禍の政府の対応など既視感があって他人事とは思えない。不気味さが漂う。支度金10万円、住民票がなくても申し込めます、というポスター、PLAN75のパンフレットやCM映像などの小道具も既視感があるからこそ一層不気味だ。

演者は役所の職員、対象となる老人、その介助者の三者の視点を織り交ぜながらPLAN75を深く描いていく。それぞれが派手な立ち回りではなくPLAN75のある日常を淡々と描いていくのだから面白い。制度に翻弄されるのはいつだって現場の人。制度を決めた政治家や高級官僚の姿が見えず、天の声としてニュース番組アナウンスが聞こえるだけも印象深い。コロナ給付金の詐欺のように、PLAN75も穴だらけで、そんな制度に人命が奪われる滑稽さが描かれている。命が軽々しく扱われる恐怖を描いていた。倍賞千恵子、磯村、マリア、コールセンターの子、それぞれがよかった