靴職人を魔法のミシン

四代目の靴職人マックスは、蒸発した父が残した
ミシンで修繕した靴を履くと持ち主に変身してしまう
魔法を発見。ドラえもんの漫画のような話の運びで
ちょっと幼い感じ。

主人公の駄目男ッぷりが何とも言えない。
町の再開発のために古いアパートの立ち退きを進める
悪漢たちとの対決を通して一人前の男になる、、、というのも
ちょっと退屈かな。

最後に蒸発した父が登場し魔法の秘密を打ち明けるのは
詰め込みすぎ。

わたしに会うまでの1600キロ

冒頭、靴擦れを悪くして親指のつめがはげかかったのを無理に剥がした勢いで
大事な靴の片方を谷底に落とし、自棄になってもう片方を放り投げるシーンから始まった。
ぐっと掴まれる。

主人公のシェリルは何不自由のないくらし、と言うわけではない彼女だが
人生を見つめなおすためにアメリカ西海岸を南北に連なる「パシフィック・クレスト・トレイル」に
挑んだ。
孤独の中を歩くとき、思い出されるのはこれまでの人生の過ちや悲しい思い出ばかり。
振り払おうにも、道は単調に続き、際限なく続くように思われ
後悔と鬱屈した気持ちが交互に襲って来る。この描写が面白い。
旅の途中で会う人はシェリルを女と見て襲わんばかりだったが、それは彼女自信の
不安から来る思い込みだったのかもしれない・・・

カウボーイの親父、ヒッチハイクしてくれたロックな夫婦、ライター、狩人、、、
それぞれに何かの思いを持って道中でめぐり合って、触れ合って、別れて行く。
気付かない所で、影響が残っていく。

ドラッグ中毒のセックス依存にかかったときでも見捨てなかった
夫ポールのことが何度も何度も思い出され、手放してはいけないことを
道中で知る。
歩くたびの中で、彼女自身を縛っていた過去の記憶を捨て去って、大事なものを
見つめなおせたと言うことか。

あん

過去の過ちを抱えた男・千太郎、居場所のないワカナ、そして
ハンセン病患者の徳江の三人の物語。

ハンセン病のせいで社会から隔離され
偏見に見舞われ捨てられてきた存在であり
それでも人はなぜ生きていくのかを
シンプルな人物背景で鋭く描いている。

人生を半ば捨てた千太郎の元に餡作りの名人・徳江が
どら焼きの餡作りに手を貸すことになり
店は話題となるが、その繁盛は徳江の過去の病歴のせいで
脆くも崩れ去ってしまう。

繁盛と衰退で人の世の姿を浮き立たせて
物語の本質である、社会から切り離されても
生きていく意味を浮き上がらせている。

社会の役に、人の役にではなく、
見る、聞く、感じる、思うで生きる意味を知る。

これまでの人生観とは違った内容だったなぁ。

バケモノの子

父は離婚で去り、母を事故で亡くした少年の成長物語。
渋谷の雑踏と異世界の住人が交わる小さな隙間があり
そこを行き来することで物語が始まるのだが
いまひとつ説得性が薄い。

千と千尋のほうがまだ、納得するのだが
本作ではとってつけたような印象がある。

バケモノの世界も日本古代神話などに基づいていれば
考えやすいのだがアニマルばかりで軽薄な感じであった。

人間の持つ迷い=心の闇に支配、それに打ち勝つための親子、仲間との絆という
ありがちなところに着地したのが残念。

マッドマックス 怒りのデスロード

狂ってる!
最高に狂ってる!
こんな面白い映画を見たのは初めてじゃないか。

監督の美意識が映画の世界を一本貫いていて
安心して身をゆだねられる。
美術セットも美しい。メイクも衣装も最高だ。
炎を吹き上げる改造車も飾りつけた馬の様に猛々しく美しい。
駆け抜ける軍団の戦意高揚をする鳴り物もギターをかき鳴らし
太鼓を叩き付ける戦車も狂ってるしか言いようがない。
しかし、最高に楽しい。

ここではないどこか、彼女の故郷に楽園を求め
脱出するもその行程で過ぎ去った沼地がそうだった・・・
沼地を渡る怪しい人影もよかった。

失意の中、新たな新天地を求めるのだが、仲間と種をもって
ジョーが支配する砦に戻り人々を解放する。
戻ると言う設定もいいな。