イントゥザワイルド

heureux302008-09-07

多感な青年が真理を探すたびに出かけていく…
アメリカ全土を股にかけるようにしての大移動。
挿入される美しい風景。
潮騒、雁の群れ、馬の走る姿、川面の光…とても詩情感あって美しく作品に緩急を与える。
主人公が空を見上げるとそこには飛行機雲が尾を引いている。
そのシーンは多々あって、人間の文明が追ってきていることを彼に示していたのだろうか。
海辺でめがねをかけて読書する彼の姿は痛々しく見える。
孤独を愛する、というよりは無理に自分をその型に押し込んでいるように見えた。
人寂しくないのだろうか。
農場での生活は彼を一変させるはずだった。
朝から夜までくたくたになって働けば頭でっかちにならずに済んだのかもしれない。
次の場所を目指して彼はまた旅に出る。北へ北へ・・・
家族を失った老人とのうそをついた関係。彼はそのうその重みは感じなかったのだろうか。そこを描いて欲しかったな。

最後はアラスカの荒野に捨てられていたバスに住み込み一人の生活に耐える。
23歳という若さで彼はそこまでいたったのだが、先の老人は何から逃げている?と指摘していた。
指摘された主人公には困惑の表情が無くただ自分の信じるままに進んでいった。
それだけ自分が強かったのだろうか。
最後に自分が見つけた幸せについて、先人の書に書き込むところが良かった。

ラストは圧巻で殉職者のようにやせ衰えた肢体を見せ付けてくれて、幸せをかみ締めるかのように死んでいった。
その表情からカメラが乱れることなくパンしていきアラスカの大地を収める。
見る人が見れば人生が変わる一本だ。