マルサの女

heureux302008-05-30

国税官が脱税者を追うという社会はストーリーなのにものすごく
人間性ある作品。
金が人の世の生き血とも言える由縁だ。
金のせいで人間の本性が丸裸になる。

権藤と板倉が酒場で落ち合うシーンがある。
話の折々に酒場にいた赤ん坊の顔が映し出される。
赤ん坊の顔が入るたびに二人の心がほぐれて
恋に似た感情が芽生えていく。
権藤はつい心を許してしまい、愛する息子に
金を残す方法について板倉に相談してしまう・・・
とてもヒューマンなやり取りだ。

同じようなシーンはラストにもある。
二人きりで再会したのち、権藤が見やった方向に
公園で遊ぶ幼い兄弟が映る。
権藤は板倉に一緒になろうと告白するが、毅然と断られる。
そして権藤は隠し金庫の暗証番号を
自身の血で、板倉のハンカチに書き染めるのだ。
このシーンは強烈だ。
生ぬるい映画が多い中、こんな強烈なメッセージはない。