笑う故郷

故郷アルゼンチン・サラスを捨てたノーベル賞作家が凱旋するのだが。

最初は歓迎ムードで演説会でもリップサービスするのだが、サラスの住民は

大作家となった彼に複雑な感情を持っており田舎者特有の劣等感を滲み出していく。

市長、絵画コンテストの落選者、彼の小説のモデルになったと言い張る息子、車いすを頼む親子、誘惑する娘、初恋の人妻と、その夫。特に、娘のセリフであった「ママのようにこんな田舎で朽ちていきたくない」がこの作品のキーワードだと思う。小さな田舎町で滞留しているため閉鎖的になっていく人々。富と名声を得て自由に世界を渡り歩く男にやっかみを感じるはずがない。歓迎のムードは徐々に嫉妬と暴力に取って代わられていく。男にとってノスタルジーはそのままであったほうが良かったのだろうか。

唯一の見方は初恋穂人妻と作家志望のホテルマン。嫉妬に狂う彼女の夫から男を脱出させようとするのだができず。この二人は救いとはなりえなかった。

撃たれても幸いに一命をとどめて彼はノーベル賞受賞以来の新作として今回の道中について小説にした。彼にとっての復讐なのだろう。