消えた声が、その名を呼ぶ

オスマントルコ帝国によるアルメニア人迫害の悲劇の中にあった
娘との再会への旅の物語。
鶴を見たものは遠くを旅する、と昔子言い伝えを双子の娘に語った
ナザレットは、まさにその言葉通りになった。
理由もなく連行され、道路工事の強制労働をさせられ
次々に行き倒れする仲間たちを見送るなか、山賊に襲われ喉を切られたため
声を失う。主人公なのに話せないという設定は面白く
周りが物語っていくところが、よかった。

連行先のシリアから海を渡って、キューバ、ノーズダコダと娘の跡を追い続けていく。
行く先々での受難に耐えることでナザレットは心が磨かれていくような
成長物語にも見える。

ナザレットに力を貸す人物は少なく、ほとんどが障害だ。
その絶望の中で彼を救うのが妻や娘たちの霊?幻覚?だ。
心に住まう希望が彼を救うのだ。