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この世界の片隅に

昭和元年生まれの主人公が戦前戦中の広島での暮らしぶりを丹念に描いた作品。

主人公すずの少女時代から大人になるまでの毎日のエピソードがどんどん進んでいく。

それぞれが独立していて7,80年前の暮らしぶりがよく分かるし、ほほえましい落ちつくので楽しい。作者や監督は老人たちから聞き取りそれらエピソードをまぶしていったのだろう。まるで遠野物語のように小さな民話の集合体だ。

特に原爆投下後に、広島市の回覧板やふすまがその爆発によって呉まで飛ばされてきた、真っ黒になった被災者が行き倒れていたが、後になって呉出身の人と判明したとか恐らく、実話なんだろうな。いろんな人の思い出を組み込んだ感じがする。

アニメーションとしてはキャラクターが4,5頭身で描かれ漫画チックであり背景が蜂蜜ながらも絵本のようなぬくもりを感じさせてくれる。所作の描き方も丹念で、主人公が大きな箱を背負うときの仕草、大盛りご飯のゆれる様などアニメーションらしくて楽しめる。また、主人公の庭先の木の上から主人公たちを見下ろしているシーンがある。木の視点、神の視点なのか?

終戦後に朝鮮の旗が掲げられているシーンがあった。在日朝鮮人たちが終戦=開放を祝って掲げたエピソードなのだろう。しかし、それを見た主人公が、被害者であると思い込んでいた自分も他国を押さえつけていた加害者であったと気がつき慟哭する、というのは無理が無いか。

突然の終戦で力が抜けてさあどうしよう、飯にするか、あの旗なんだろなというくらいではないか。それとも恐怖を感じる、というのが実際ではないか。

徐々に上映する映画館が増えているという。このような作品が広がるのはいいことだと思う。