ムサン日記 白い犬

脱北者のその後を描いた作品。
血のついたジャンパーを洗うところから映画は始まる。
その横で知らぬ顔で用を足す女。
主人公スンチョルのおかれた立場がよく分かる。

同じ脱北者仲間のところに厄介になっている身で強くはいえない。
遠慮がちに節目がちに笑うことなくすごす日々。

就職しようにも脱北者と分かれば雇ってはもらえず
安いポスター貼りの仕事しかない。
友達も家族もいない脱北者
拾った白い子犬だけが唯一の味方となった。

スンチョルは白い子犬を可愛がるが
周りは辛辣な人間ばかり。
金の無心、暴力、侮辱、彼を全否定することばかり。

詐欺を働いていたことがばれた仲間に助けを乞われ
隠し金を自分の手の中に収めたスンチョルは
それまでの服と髪型を変えて生まれ変わった。
新しい生活を手に入れたかと思ったのだが
ラスト、白い子犬は無残にもひき殺されてしまった。
地獄から地獄へ。
舞い降りた白い子犬は彼の最後の優しさだったのだが
その優しさも、この地獄では潰されてしまうのだ。