少年シリルの赤いシャツが印象的で風景に馴染んでよかった。
その赤シャツが自転車でスクリーンを駆け抜ける様も美しい。
何らかの理由で父と離れて暮らすことになったシリルは
父の途切れていく愛情を必死に繋げて行こうとする。
ひょんなきっかけで里親になることになったサマンサは
父親に合わせる手助けもするのだが、なぜやるのだろう。
父、子、悪の道に引きずり込む悪がきと様々な立場、多面性も
描かれているのにサマンサのシリルに対する愛情の源が
分からなかった。
サマンサの恋人ジルに俺とシリルのどちらが大事なのかの問いは
ちょっといただけないな。
そこで、シリルを選ぶ根拠はなんだろう。
そういうものは描かれなくても、愛情が芽生えだしているということなのか。
芽生えている雰囲気は余り見受けられなかったような。
強盗を犯してまで、愛を自分の存在を認めてもらいたかったシリルのいじましさが
よかった。
ハッピーエンドかと思いきや
強盗の被害者に復讐され怪我する。
そのときの被害者親子のやり取りは緻密だ。
よろよろと自転車をこいでいくラストカットは
罪を償った、ということなのだろうか。
最後にシンとなる。
追記
ここまで書いて気がつくのだが
ラストは愛の受容と拒絶ではないか。
事務所でソーシャルワーカーがシリルと被害者(父親)との
やり取りで謝罪する・謝罪を受入れるというセリフがある。
被害者(息子)は陪席せず、シリルの謝罪を受入れ拒否を示した。
自分を拒絶する人がいる、ということが
受入れてくれる人がいることをより明確に示してくれる。
痛めつけられた体を起こしてシリルは自分を受入れてくれる人のところへ帰るのだ。