イキガミ

大して期待せずに見たが。
意外に広いものだった。
これは良作。

命の大切さを知るために
1000人に一人の割合で国家により殺されてしまう世界なのだが
狂ってる事でも誰もそれに真正面から批判、否定できない世界でもあった。

意外に、そのフィクションの世界に身をゆだねられた。
お芝居であると分かっていても、妙なリアリティがあった。
戦争末期の日本の状況からイメージされた世界だからだろうか
実際にあったものを置き換えたからこそ出せるリアル感なんだろう。
だから、当時の日本もあんな雰囲気だったかも知れない。

イキガミを突きつけられる若者たちは
かつてのいじめっ子に恨みを晴らす青年
ミュージシャン志望の若者
妹を助けたい兄
引きこもりの青年
なのだが、共通していたのはイキガミを受入れていること。
仕方ない、順番が来たみたいな、感覚で受入れてその準備を
始めている。もちろん掴みかけたチャンスをあきらめる絶望などあるが
仕方ない、という雰囲気が出ていた。
回りも仕方なく送り出す、ように。

妹のために、これから死ぬ自分の角膜を提供するために
みんなで打つ芝居など、本来はその不条理な死に対して怒りが向けられるべきなのに
死を受入れてその後のことを考えている。

この不条理をベースにして物語がなされていたのがよかった。