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悪人

面白かった。
見ごたえのある作品だ。
何よりも地方の行き詰まり感、空回り感、諦観がよく出ていた。
特に裕一の乗り回すスカイラインGTR、黒髪が見える金髪の染まり具合、
垢抜けない服装、解体工、やさぐれ感。
逃避行する羽目になった光代の職場もいい演出だ。
どこにでもありそうな郊外型のロードサイドの紳士服屋。
店内は客も少なくただ、ただ時間を潰していくだけのようなそんな毎日。
長崎や佐賀という地方中の地方に生きる人々ではないか。
殺される佳乃はそんな田舎が嫌で久留米を出て華やかな博多に出てくる。

博多>佐賀・長崎・久留米という構図が暗にしてある

面白いことも無く、出会いもなく刺激もなく年寄りばかりで同じような毎日が続く地方での暮らし。
魂が磨耗するだけの日々。一瞬の快楽のために一時間半も車を飛ばして女に会いに行く。
自転車で家と職場の往復の日々。
年寄りだらけの公民館での催眠販売。

地方暮らしの息苦しさが伝わってくる。

そんな中でも見栄を張る佳乃の演出はよかった。
田舎から出てきて、自分も田舎者なのに同僚を子ども扱いしわずかな優越感に
浸りたがる。そこに派手な大学生・増尾を手に入れたと嘘をつくところに
田舎から出たい、ここから出たい、という情念を感じてしまう。

山道に捨てられて裕一に助けてもらっても
自分より格下の田舎者に助けてもらうというのは成り上がった
彼女のプライドをいたく傷つけたのだろう。金切り声と罵倒がすごかった。
ひとえに地方に住まうものの地方嫌い、都会へのコンプレックスではないか。

悪人という映画はこの地方の閉塞感がもたらした人間のどす黒さを描いたのか。

物語は佳乃の死からだんだんと盛り上がり酸欠のような男女の絡みがあって
惹かれあうようにして逃避行していく。

同時に遺族、増尾、裕一の祖母とそれぞれの振り回されていく人生が描かれる。

テーマは人間の多面性なのだろうが、
殺された佳乃と増尾はただただ憎たらしい人間にしか見えなかった。
それでよかったのかな。
そして祖母と佳男は上の二人とは対極的な善として描かれていた。
でも、映画としてはこうでもしないとテーマをあぶりだせないのだろうな。

最後の灯台でのつかの間の休息は
裕一に罪を思い知らさせる日々だったのか。ちょっと情緒的過ぎたきがする。

しかし、この作品は地方で暮らす若者の行き詰まり感がよく出ていて参った。
もちろんすべての若者が行き詰ってるわけではないのだが。