おとうと

堅実に生きる姉と無軌道に生きる弟との交流を描く。
物語は主人公である母とその娘が生きてきた時代の映像から始まる。
娘役のモノローグが続く。
台詞回しがいい。
声の響きもいい。出演者は総じて美声の持ち主だ。

特筆すべきシーンが二つ。
かんしゃくを起こした鉄郎が土産に買ってきたアイスを姉に投げつけると
飛び出た汁が姉の純白の白衣にしみを作った。

雪の降る夜、小春に思いを寄せていた亨が風ではためくカーテンを背に
小春が別れたやったーと思ったといった瞬間カーテンの生地が彼の姿を隠し
はためいた後に彼自身も消えていた。

結婚式で泥酔し親族に恥をかかせるシーンは
見ている側もとても痛々しく、離婚の要因のひとつになっただろうと
納得できる。

新郎は小春とまじめに会話もせずに要件を言えとか
理解の相違などとまともに取り合おうともしない。
なぜ小春はこの男と結婚を決めたのか?
見合いだったのか。


どうしようもない男に振り回される家族だが
ありのままを受入れて、情けを感じ
思い合っていく姿がたまらなくなる。

最後、ぼけてきたであろう義母が知ってか知らずか
鉄郎を結婚式に呼ぼうというのだ。

冒頭のシーンでは毛嫌いしていたのに
この変わりように、この映画のすべてが詰まってる感じがした。