ガチ☆ボーイ

heureux302008-03-01

学生プロレスに挑戦する青春群像。
であるが、主人公に事故による記憶障害のため
今日一日の記憶しか残されない。
眠って起きると事故以前のときの記憶のみで
それ以後は残っていないというものだ。

学生プロレスという非日常な世界の青春活劇であれば
退屈なものであっただろうが、記憶障害の青年というキーは
とても面白かった。

様々なプロレスの技を必死に覚えても次の日には忘れてしまうのだ。
また仲間との交流も次に日になれば0からやり直すのだ。
人間の生活や人間関係というものが日々の積み重ねであることを
考えると、この障害は人間の社会性を奪う恐ろしいものだ。
当人のみが取り残され、救いようのない孤独感にさいなむ事だろう。


学生プロレスを始めたのは頭で覚えられないなら体で覚えるという理屈なのだが
とてもストレートに訴えられるものがある。
翌朝目覚めても筋肉痛で自分が何者かを感じ取るという。
肉体と脳の関係を考えさせられる一節だ。
そうなると、たとえばボディービルのように体を作ることを始めるのは
彼にとっては何だろうか。
記憶はなくなっても体は変化していく。
または刺青やシ手術など肉体に変化をもたらす行為とは
彼にとってなんだろうか。生きている証なのだろうか。

ラストはプロレス技の応酬でとても痛々しいシーンがあった。
ただ、肉体で生きる彼にとってはそれは記憶に結びつけるというより
肉体に結びつける行為なのだ。生きることそのものだ。
このメッセージがストレートに胸を打った。

欲を言えば記憶生涯の彼の部屋のあり方、日々の生活、家族関係を
もう少し挿入したほうが良かったのではなかろうか。