酒井家のしあわせ・気球クラブ、その後

酒井家のしあわせ
何気ない家族の肖像をリアリティを持って描いた秀作。
玄関脇においてあった金魚蜂が家族というもろい関係を
映し出していた。金魚蜂は汚れていたが、母親が洗ってきれいになっていくところは
家庭の中心は母ということだろう。
父親が家を出て行くとき、その金魚蜂が落ちそうになった。
それを救ったのも母だった。
金魚蜂で家族の移ろいをあぶりだしていたよ。

行く当てもなくトボトボト実父の実家を訪ねていくところも
切なくてよい。頼りにしていったその家も、祖父はぼけているし
叔父も女に振り回されていた。
頼れる大人、甘えられる大人がいないのがよく分かった。

滴り落ちるアイスを食べるシーンのエロティックさ。
いいね。

ラスト、女の子とのキスシーンを思い出しついにやついてしまう。
父親母親に笑われても自尊心は守られているとうことかな。

ギクシャクする家族を、家族というものはギクシャクするもので
その白々しさをユースケが怪演していた。
友近もいそうだ、おんなおかん。
マリもいい。

観て気持ちよくなる映画だった。中学生のころの甘酸っぱさ、情けなさ、非力さを
思い出したよ。

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◆気球クラブ、その後

かつてのサークル仲間の死によって物語が始まる。
こういう形式って始めて見る。
軽薄で浮ついていた彼ら彼女らの幼い青春群像を見せてもらった。
今時の若いのってあんな感じなんだろうな。
中身がなくてすかすか。

村上の死によって過去と決別するシーンがすごい
携帯でなんとなくつながっていた友人関係を一掃する。
こういうのって大いに共感できる。
ばらばらになって舐めあうこともできなくなって
孤独と戦っていくことで青春が終わるのだ。

余韻の残るいい映画。
荒井由美の「翳りゆく部屋」もグッド。